Indian Textile Insights
第5回 インドで生地を売る
実践ガイド 全6回・第5回 / インドで生地を売る 契約・支払い条件・品質クレーム対応——商談成立後に詰めるべきこと — 日本の裁判所の判決はインドで執行できない。決済条件の選び方、契約書に必ず入れる条項、色差クレームが起きたときの備え — インド準備銀行(RBI)FED Master Direction No.17/2016-17「Import of Goods and Services」・日本貿易振興機構(ジェトロ)貿易・投資相談Q&A および「為替管理制度(インド)」・インド民事訴訟法(Code of Civil Procedure, 1908)第44A条・インド仲裁調停法(Arbitration and Conciliation Act, 1996)第44条・インド物品売買法(Sale
第4回 展示会・現地商談の進め方——サンプル・価格表・通訳・アポの取り方
実践ガイド 全6回・第4回 / インドで生地を売る 展示会・現地商談の進め方——サンプル・価格表・通訳・アポの取り方 — インドの主要繊維展示会と時期、持って行くサンプルの形、英語価格表の書き方、通訳の使い方、見積もり後の沈黙への対処 — 日本貿易振興機構(ジェトロ)・Bharat Tex Trade Federation(繊維輸出振興団体コンソーシアム、インド繊維省後援)・Messe Frankfurt Trade Fairs India/MATEXIL/ITTA・AEPC(アパレル輸出振興評議会)・CMAI(衣料品製造業者協会)・SGCCI(南グジャラート商工会議所)・特定非営利活動法人日印国際産業振興協会(JIIPA)ほか各機関・各展示会主催者の公表資料をもとに編集。本稿は確認済みの一次資料のみを掲載し、推論・予測的解釈は含まない。確認できなかった項目は「未確認」として明記している。 ここまで、第1回(買い手地図)で誰に売るかを、第2回(上陸コスト)でいくらで売れるかを、第3回(規制の関門)で法的に入るかを確認してきました。準備は整いました。次は実際にインドへ行き、買い手と顔を合わせる段階です。 本稿では、どの展示会に行くべきかという選択から、持参するサンプルの形、英語の価格表に何を書くべきか、通訳をどう使うか、そして初めての渡航で誰もがつまずく「見積もりを送ったのに返信が来ない」への対処まで、現地商談の実務を順番に整理します。 一言でまとめると:インド最大の繊維見本市Bharat Tex 2026(2026年7月14〜17日開催)は138カ国・約9万5千人が参加する規模で終了し、日印国際産業振興協会(JIIPA)のジャパンパビリオンも出展したが、次回開催時期は本稿執筆時点(2026年8月)で未発表。生地メーカー自身にとっては、むしろCMAI主催の生地・副資材専門見本市「FAB Show」や、技術繊維を扱うならTechtextil Indiaの相性がよい。サンプルは「代表色の現物+残りは色見本カード」を商談前に送付するのが定石(ジェトロ)。価格表はプロフォーマインボイスの形式で、EXWを基準にFOB/CIFへ換算し、数量・支払条件・適用為替レート・有効期限を明記する(ジェトロ)。通訳は機械翻訳に頼らずプロを手配し、事前に自社情報を共有するのが鉄則。見積もり後の沈黙には商談当日〜翌日のフォローアップを徹底したうえで、「沈黙=関心なし」と決めつけずに気長に構えることが実務上のポイントになる。 編集後記 本稿は全6回シリーズ「インドで生地を売る」の第4回。買い手(第1回)・価格(第2回)・規制(第3回)という「机上の準備」から、初めて現地に足を運ぶ段階に移る回である。展示会情報やサンプル・価格表の作法は変化しやすく、確認できた一次資料が限られる論点(サンプルの色数の目安、通訳の地域言語別対応、フォローアップの具体的な頻度など)も多い。本稿では確認できた事実と、確認できなかった事実を明確に分けて記載した。次回・第5回では、商談が成立したあとの契約書の要点・支払い条件・品質クレーム対応を扱う。なお第2回で予告した取引形態(FOB/CIF/DDPの選択)は、シリーズ最終回の第6回で詳しく扱う。
第3回 関税だけではない——「そもそも輸入できない」を防ぐ4つの関門
実践ガイド 全6回・第3回 / インドで生地を売る 関税だけではない——「そもそも輸入できない」を防ぐ4つの関門 — 品質管理令(QCO)・BIS認証・最低輸入価格・アゾ染料証明。日本の生地は何をクリアすれば通関できるのか — インド規格局(BIS)・インド繊維省・インド商工省/DGFT(外国貿易政策2023 および各告示)・インド政府情報局(PIB)・インド消費者問題省「法定計量(包装商品)規則2011」・グジャラート高等裁判所関連報道(Fibre2Fashion)ほか各機関の公表資料をもとに編集。制度・告示番号・日付は公表資料に基づく確定情報、認証取得の期間・費用は「実務上の目安」として明示して区別している。 前回(第2回・上陸コストの作り方)で、日本出荷1,000円/mの生地がインドの買い手の手元で約815ルピー/mになることを1行ずつ計算しました。価格の見通しは立ちました。 しかし、価格が合っても荷物が港で止まることがあります。インドには「関税を払えば入る」という世界とは別に、「認証がないと、そもそも輸入が違法になる」という規制の層が存在します。ここを知らずに商談を進め、成約後に「認証取得に半年かかります」と伝えることになるのが最悪の展開です。 本稿では、日本の生地・素材メーカーが実際に直面する4つの関門を、根拠となる告示番号と日付つきで整理します。結論を先に言うと、4つのうち2つは日本のメーカーにとって「有利に働く」——ここが本稿でいちばんお伝えしたい点です。 一言でまとめると:一般のアパレル向け織物・編物にはBIS認証(標準マーク)は不要。さらに日本原産の繊維品はアゾ染料の事前船積証明が免除されている(外国貿易政策2023 附録2X)。つまり4つの関門のうち2つは、日本製生地には最初から開いている。実際に止まるのは、①技術繊維(ジオ・アグロ・メディカル・プロテクティブ)を扱う場合のQCO=BIS認証が必須で取得に半年以上と、②合成編物の最低輸入価格(US$3.5/kg)。ただし後者の水準は日本製の実勢価格の約1/9で、事実上引っかからない。 編集後記 本稿は全6回シリーズ「インドで生地を売る」の第3回。第1回で買い手を、第2回で価格を確定させたうえで、「その荷物は法的に入るのか」という前提条件を扱う。規制の記事は「あれもこれも必要」と不安を煽る書き方になりがちだが、本稿は逆に「自社に関係のない規制を切り捨てる」ことを目的とした。関係のある規制だけに時間を使うためのフィルターとしてお読みいただきたい。なお第2回執筆後の2026年6月に、ポリエステル糸のQCOをめぐる司法判断が動いている。買い手側の原料事情に直結するため、⑧で最新の経緯を整理した。 この記事の内容 ① 先に答え——4つの関門のうち、自社に効くのはどれか ② 関門1|QCO(品質管理令)とは何か——「基準を満たしていても、認証がないと違法」 ③ 自社の商材はQCO対象か——現在有効な繊維系QCOの一覧 ④
第2回「値段の壁を最初に計算する——上陸コストの作り方」
実践ガイド 全6回・第2回 / インドで生地を売る 値段の壁を最初に計算する——上陸コスト(landed cost)の作り方 — 日本で1,000円/mの生地は、インドの買い手の手元でいくらになるのか — インド財務省2025-26年度予算(Finance Bill 第2附則)・インドGST評議会 第56回会合・インド商工省/DGFT(外国貿易政策2023)・AEPC(アパレル輸出振興評議会)・日印包括的経済連携協定(IJCEPA)・日本商工会議所・Fibre2Fashion ほか各機関の公表資料をもとに編集。税率・制度は公表資料に基づく確定情報、運賃・諸掛・マージンは「仮定値」として明示して区別している。 前回(第1回・買い手地図)の最後に、渡航前チェックリストのQ3「中国製の何倍の単価になるか、把握しているか?」を挙げました。今回はその答えを出します。 インドで生地を売るとき、日本のメーカーが最初につまずくのが「自社の生地が、インドの買い手の手元で結局いくらになるのか分からない」という状態です。この数字を持たずに商談に行くと、価格を聞かれた瞬間に会話が止まります。逆にこの数字を自分で出せるようになると、狙うべき買い手も、諦めるべき買い手も、その場で判断できるようになります。 本稿では、日本の工場出荷価格1,000円/mの生地を例に、インドの買い手の手元価格まで1行ずつ積み上げます。電卓さえあれば自社の商材でも同じ計算ができるように作りました。 一言でまとめると:日本出荷1,000円/mの生地は、通常の関税ルート(基本関税20%)でインドの買い手が直接輸入した場合、実質原価約815ルピー/m(約1,358円相当・US$8.54/m)=日本出荷価格の約1.36倍になる。輸入商社を挟むと約1.56倍。ただしインドには関税が消える正規ルートが2つあり(日印EPAの特恵税率/輸出向け生産の前払輸出認可)、これが使えると約1.12倍まで下がる。この0.4倍分の差が、売れるか売れないかを分ける。 編集後記 本稿は全6回シリーズ「インドで生地を売る」の第2回。読者から最も多く寄せられる「結局いくらで売れるのか」という問いに、計算過程をすべて開示して答えることを目的とした。税率・制度は出典付きの確定情報だが、運賃・保険・通関費用・商社マージンは自社の実見積もりで置き換えるべき「仮定値」である。本稿ではその区別を明示している。 この記事の内容 ① 先に答え——1,000円/mの生地は、インドでいくらになるか ② インドの輸入諸税は4つだけ——計算式を覚える
第1回「誰が生地を買っているのか——インド市場の『買い手地図』」
実践ガイド 全6回・第1回 / インドで生地を売る 誰が生地を買っているのか——インド市場の「買い手地図」 — 年商10〜100億円の生地メーカー・素材メーカーが、最初に見極めるべき5種類の買い手と産地 — IBEF(インド・ブランド・エクイティ財団)・インド繊維省(Ministry of Textiles)・Invest India・ティルプール輸出業者協会(TEA)・アパレル輸出振興評議会(AEPC)・ジェトロ(JETRO)・texfash・IMARC ほか各機関の公表資料をもとに編集。本稿は確認済みの公表資料のみを掲載し、推論・予測的解釈は含まない。 「インドで生地を売りたい」——そう考えたとき、多くの日本メーカーが最初にやってしまうのが、「インドの縫製工場」をひとまとめにして探し始めることです。しかしインドで生地を買う相手は一種類ではありません。買い手のタイプによって、求める品質も、買う量も、支払い方も、まったく違います。ここを取り違えたまま渡航すると、時間と旅費だけが消えていきます。 本シリーズは、インドでの販売経験がゼロの日本の生地メーカー・素材メーカー(年商10〜100億円規模)が、実際に受注に至るまでの手順を全6回で追う実践ガイドです。第1回のテーマは、すべての出発点である「買い手地図」——誰が、どこで、どんな生地を買っているのかを、公表データで確認します。 一言でまとめると:インドの繊維・アパレル産業は「輸出の国」ではなく、圧倒的に「内需の国」である。輸出額330.1億ドル(FY2025-26、インド繊維省)に対し、国内市場は2,250億ドル規模(IBEF)。つまり輸出向けは全体の1割強にすぎない。それにもかかわらず日本企業の視線は輸出縫製工場に集中しがちである。生地の買い手は大きく5種類あり、それぞれ財布の大きさも判断基準も異なる。まず自社の商材がどのセグメントに刺さるかを決めることが、インド販売の第一歩になる。 編集後記 本稿から新シリーズ「インドで生地を売る——日本の生地・素材メーカーのための実践ガイド」(全6回)が始まる。既報の「日本・韓国の生地はインドで売れるか(第1回)」「同(第2回)」が「売れるかどうか」の市場分析だったのに対し、本シリーズは「では、明日から何をどの順でやるのか」を実務手順に落とすことを目的としている。専門用語は初出時に必ず解説する。 この記事の内容 ① 大前提——インドは「輸出の国」ではなく「内需の国」 ② 生地を買う5種類の買い手——財布も判断基準も違う ③ 産地地図——どこへ行けば自社の買い手がいるか
日本の繊維産業が“インド経由でEUに売る”可能性
市場調査レポート / インド × EU × 衣料品輸出トレンド インドのEU向け衣料品輸出は本当に伸びているのか — 一次データで読み解く「記録更新」と「反落」、そして日本の繊維産業が“インド経由でEUに売る”可能性 — Eurostat・インド繊維省(Ministry of Textiles)・インド海運省・EU欧州